ピラティスを始めるきっかけとして、「痩せたい」「体を引き締めたい」という声をよく耳にします。
一見同じように感じるこの2つの言葉ですが、実は身体の中で起こっている変化はまったく違うのです。
皆さんは、「痩せる」と「引き締まる」、この違いをどのように捉えていますか?
今回は、この2つの違いをピラティスの観点から分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
「痩せる」とは、体の“量”が減ること
「痩せる」とは、体の重さが減ることを指します。
体重は、脂肪・筋肉・水分・骨などの合計です。
ダイエットをして食事を減らすと、確かに体重は落ちやすくなります。
しかし、その減った分が脂肪ではなく筋肉や水分である場合、体はやせ細り、ハリや活力を失ってしまうこともあります。
体重計の数字が下がると、一時的には嬉しいかもしれません。
けれど、鏡を見たときに「なんだか元気がない」「たるんで見える」と感じるのは、まさに“量だけが減った”状態なのです。
つまり、「痩せる=軽くなる」ことであり、「美しく整う」こととは必ずしも一致しません。
「引き締まる」とは、体の“質”が変わること
一方で「引き締まる」とは、筋肉が内側からしなやかに働き、体のラインが整う状態を指します。
体重はそれほど変わらなくても、鏡を見るとお腹がフラットに、ヒップがキュッと上がって見える──。
それは、筋肉が正しく使われ、姿勢が整うことでボディラインが内側から支えられている証拠です。
ピラティスでは、体の深い部分にある「インナーマッスル(深層筋)」を中心に鍛えていきます。
この筋肉たちは、普段の生活では意識しづらい部分ですが、姿勢や骨格を安定させる大切な役割を持っています。
インナーマッスルがしっかり働くようになると、外側の筋肉に余分な力を入れなくても自然に体が引き上がり、姿勢が美しく整っていきます。
その結果、体重が変わらなくても見た目がスリムになり、周囲から「痩せた?」と言われるような変化が現れるのです。
ピラティスが「引き締まる体」をつくる理由
ピラティスの動きは、一つひとつが丁寧で、呼吸と連動しています。
深い呼吸を行いながら体幹を安定させることで、酸素が全身に巡り、代謝が高まります。
そのため、脂肪燃焼効率がアップし、姿勢を支える筋肉が自然に活性化していきます。
また、ピラティスでは筋肉を「鍛え上げる」というよりも、「整える」「バランスを取り戻す」ことを大切にしています。
硬くなりすぎた筋肉を緩め、使われにくかった部分を呼び覚ますことで、全身の筋肉が理想的な長さと柔軟性を取り戻していくのです。
こうしたプロセスが、「しなやかで引き締まった体」につながります。
「痩せる」と「引き締まる」は別のルートでつながっている
体の見た目を変えたいとき、ただ体重を減らすだけでは本質的な変化は得られません。
理想的なのは、「脂肪が減る」と同時に「筋肉がしっかり働く」こと。
この2つが両立してこそ、本当に健康的で美しいスタイルが生まれます。
「痩せる」ことだけを目的にすると、数字には表れやすい反面、筋肉量が落ちて代謝が下がり、リバウンドしやすい体になってしまいます。
反対に、「引き締まる」ことを目指すと、体重が大きく変わらなくても、姿勢が整い、代謝が上がり、内側から健康的なエネルギーが湧いてきます。
その結果、体は軽く感じ、日常動作もスムーズになり、心まで前向きになれるのです。
私自身の体験から
私もかつては、「体重が減ること=成功」と思っていた時期がありました。
食事を減らしすぎて体重は確かに落ちたものの、疲れやすく、肌のハリもなくなってしまった経験があります。
そんなときに出会ったのがピラティスでした。
最初は見た目の変化よりも、呼吸が深くなり、体の軸が安定する感覚に驚きました。
続けていくうちに、お腹周りや姿勢が自然に整い、周りの友人から「スタイルが変わったね」「健康的に見える」と言われるようになりました。
体重は以前とほとんど変わらないのに、鏡に映る自分が引き締まって見える──まさにピラティスによる“質の変化”を実感した瞬間でした。
まとめ
「痩せる」は数字の変化。
「引き締まる」は見た目と中身の変化。
どちらも大切ですが、健康的で持続できるのは「引き締まる」ことを目指すアプローチです。
ピラティスは、無理なく体の内側から変えていくメソッド。
呼吸と姿勢を整えることで、体だけでなく心までも前向きにしてくれます。
数字ではなく、“自分らしい美しさ”を手に入れたい方こそ、ピラティスがぴったりです。
