本日の研修は、 老若男女みんな大好き、ビッグスリーのトレーニング研修だった。
「いかに重たいものを持ち上げれるか」
そんなシンプルな課題に、 トレーナーとして知識を以てして、 再びその課題と向き合う。

みんなのフォームは、 ゴールに向かって描かれた1本線のように、素直で純粋だった。
その中でも、早瀬くんは、とても素直だった。 重量を上げるためだけに、鍛えられた筋肉が、その素直さを物語る。

だが、阿部講師は、 ゴールを操る。 後ろに引いたり、前に押したり、 横にずらしたり、隠したり。
トレーニングの目的について、もう一度問いを投げかけたのだ。
そうすることで、 ただの重たいものを持ち上げればよいという認識が、 まるで変わる。
それについて、考えることの意味をもう一度考えて欲しいという、 阿部講師の想いが伝わってくる。

みんなが、固定概念を脱ぎ捨てる中、 早瀬くんは服を脱ぎ捨てていた。
早瀬くんの、アドレナリンでガン開きした目には、 「目の前の重りをどう上げるのか」 それしか見えてなかった。
そう、彼だけ筋トレをしに来ていたのだ。
だがそれは、彼は強さと坂本は感じた。
言葉でなく体で示すことの、強さについて感じた。
端っこで、カメラを持ちながら分かったつもりになって、足を組んでいる人より、よっぽど人を動かす力がある。
坂本のことである。
「考えるより、感じろ。」
「感じてから、言葉にしろ。」
最初、拒否していた坂本は反省して、 デッドリフトに参加させてもらった。
思ってたより首を上げない。そんな単純な動きを再現できなかったことにショックを受けた。 自分の五感で、この研修に向き合うことができたと感じた。
早瀬くんは、重たい重量をもって、だんだんとハイになっていく。
早瀬くんを、 止める人は誰も居ない。
そんな空間が良かった。
そして、早瀬くんとは違った強さを持った人たちがいた。
ピラティストレーナーたちだ。

早瀬くんが剛の強さだとすると、
ピラティストレーナーたちは、柔の強さであった。

彼女たちはこれまで真摯に、「ピラティス」に打ち込んできた生粋のピラティス生まれピラティス育ちのトレーナーだ。
彼女たちにとって、今日の研修場所は、
ロサンゼルスのべニスビーチ、通称「マッスルビーチ」に見えただろう。まさにアウェーだ。

あ。おっと、
もう1人、ここをマッスルビーチと勘違いしているトレーナーもいるようだった。
ピラティストレーナーたちは、韓国旅行はお手の物。
だけど卒業旅行に、いつもと全然違うロサンゼルスに足を踏み入れ、旅行自体を新鮮に楽しむように、
トレーニングという、知らない土地を積極的に楽しむ姿勢が、私には見えた。
アヴニールのトレーナーは、また一つ、卒業を迎え、新たな門出に進んでいるように坂本は感じた。