坂本は遅刻していた。
なぜならコンビニでおにぎりを購入したからだ。(空腹には勝てない坂本である)
小走りするも、電話鳴って、電話対応。
電話も終え、ようやく到着。
カメラを持って入店すると、
阿部講師「ちょいちょい、心の準備ができてない」
坂本のジャーナリズム精神が一瞬掻き立てられる。
だが、そこは大人しくテイク2。
皆にバレないようひっそりと退室し、再入室をした。
インテリジェンスな立ち姿でいる阿部講師がそこにはあった。

本日の研修会は、【嫋やかプロジェクト】の集大成とのこと。
その総集編ということで、大変な気合が入っている。
まるで卒業式直前の、澄んだ瞳をした教師のような眼差しだ。
そしてスタッフは卒業生のように、
目に見えるもの、人との触れ合い、一瞬一瞬を楽しみながら、どこか現実が過去に変わっていく懐かさを目に秘めて・・・・・・
と思いきや、めちゃくちゃ無邪気に楽しんでる~笑
なんなら入学したての「今日からよろしく1年生」みたいな雰囲気だった。



集大成を習得するということは、「壱ノ型 水面斬り(みなもぎり)」を会得するシーン。
これまでの努力を開花させる荘厳でしんみりした場の雰囲気を、
これまでの思い出に照れくささを感じつつも、どこか誇らしげに感じている面々を、今日の研修会と重ね合わせるつもりだった。
しかし、現れたのは元気いっぱいなよろしく1年生たちだったことを、坂本はまじまじと目撃した。
どういうことだろうか?
すこし考えると、間違っていたのは坂本の方だったということがわかった。

そもそもだが、阿部講師は、この研修プロジェクトを学びの場として考えていないということだ。
いうなれば知識ではなく意識として捉えており、それらはアヴニールのブレインのみならずスピリットにまで落とし込まれるものであると位置付けている。

まあ、簡単に言うと、スキルアップの勉強ではなく、アヴニールに触れるといった表現が正しい。
単語や文章やイラストに注力し、自己投資に来た優等生だと分かりづらいだろうが、
資料に触れず、ふらりとやってきた遊び人の坂本としてはその意味が十分理解できた。

研修というのは、研究とは違い「考える」ことを根こそぎ奪い取る。
いやまぁ、本日の資料だけで「10ページ」「12783文字」しかもイラストと、セルフィーも入ってのボリュームだ。優等生なら、見るだけで研修が終わる。
そして、その資料を前座として扱い、チームを波のように阿部講師は誘導している。

誤解を恐れずに言うと、
12月からの研修は、明らかに“異質”だった。
楽しい人には楽しく、面白くない人には面白くない。
初心者と上級者の教室を分けず、1つの教室で研修は行われているようなイメージだ。
というかそのままだった。

しかし、出会って4ヶ月もすると、そういったわだかまりは見えなかった。
ピラティストレーナーも、トレーニングを、自分を構成する1つの要素だと、認知し始めたせいなのか。
12月に出会った生意気な奴を、友と呼ぶのには十分な期間だ。
そう、今回の研修会は、友だちと戯れ、その場の雰囲気を楽しんでいるという表現がピッタリだった。
集大成という言葉で、坂本は勝手に「卒業式」のように考えていたが、実は「入学式」だったことに気付かされた。
ゴールはわからないが、アヴニールが変わり始めていることを実感している。
アヴニールは、日本全国どの学校よりも、いち早い入学式を3月はじめに行われたのであった。